算数のこと
私の要請は現地教員の算数科指導力向上です。とはいえ着任してすぐにガンガンアドバイスを言うのも無理な話。まず大切なのは現場を知らなければ。ということで最近も基本的にはいろんな先生の授業を見まくっている毎日です。そこで今日はこれまでに気づいた算数に関する課題をざっくりまとめようと思います。
1 授業の形式
基本的に授業はワークブックをひたすらやるという感じです。教科書はありません。残念ながら事前に一緒に解くことも説明することも無しに丸投げする先生もいます。当然自力で理解し課題をできる子はごく一部で、多くの子は理解せずに適当に書いたり諦めたりしています。宿題も同じで、説明なしに「次の見開き1ページが今日の宿題だよ。」というのが普通。
2 解説・説明時の課題
ワークブックを始める前に解説・説明する先生ももちろんいます。ただここに技術的な問題がいくつかあります。
①一方的に説明を話し続けるだけで、児童に問いかけたり考えさせたりする瞬間がない。流すだけ状態。
②問題を解く「方法」の説明ばかりで、「意味」や「考え方」を押さえていない。
③図や絵や具体物による理解補助がない。
大きくこの辺りが問題かなと思います。とにかく見ていると算数をしているというより作業をしているという感覚を覚えます。ワークブックの弊害だなあ。
※高学年になるにつれてこの課題がなっている感じ。1年生なんかは数の意味理解とかちゃんと授業している。
3 答え合わせ時の課題
多くの児童は意味理解をしていないままワークブックに取り組んでいるので、当然間違えまくり。だから答え合わせに時間がかかるかかる。先生は早く進めたいので正解が出るまで指し続けます。「みんなが間違えているから立ち止まって丁寧に解説しよう」という感覚はないみたいです。
4 評価の課題
結論から言うと、評価が甘いので理解が不十分なままに進級してきている子がたくさんいます。知識理解の積み重ねがないから当然高学年になるほど苦しくなります(例えば6年生の分数の足し算をする際、そもそも割り算ができないから約分できないなど)。日本でもこういう状況は多々あると思うけど、南アの方がより深刻な感じ。
問題の評価方法はAssignment 50%,Test50%で、合計のうち40%以上で進級というもの。4割できていればいいって甘すぎないか……?? 実際のところはもっと大変で、4割以下の子でも進級することがあるようです。毎年新一年生は入ってくるからね、ずっと残し続けると低学年がパンクしてしまうそうです。
先週末、Assignmentの様子を見てびっくりしたのがこちら。
なんと家でやってきた後に友達同士で相談し合いながら正しい答えを考えています。先生の補助もアリです。私もたくさん補助しました。「普段の授業でこういうの取り入れればいいのに」と思いつつ、「なぜ進級に関わるものを他人と相談して取り組ませているのか」と驚きつつ。けど同時に「こうでもしないと4割も取れないよなあ」とも思うのでした。
5 低学年の実態
低学年の先生は比較的丁寧に指導している人が多いのだけど、見ていて感じたのはペースが早すぎるなということ。これはおそらく先生ではなくワークブックの問題です。1年生が1、2、3の意味を習っていたと思ったら、翌日には足し算に入っていて、翌週の頭にはもう引き算をしていました。これでは定着は難しいよなあというのが正直な感想。
それと衝撃を受けて撮った写真がこちら。
2年生、数字をカウントする問題です。こんなんじゃカウントできるわけないよなあ。子どもによっては意味もわからず適当に線を引くだけなのでこんな感じのノートの子もいました。
先生に◯でカウントした方が数えやすいのではと提案して数日後のノートがこちら。
だいぶ見やすくなったね。とはいえ10の束を作れない子がほとんどなので、まだまだ先は長いです。
気づいた課題をざっとあげてみましたが、どれも解決のしがいがありそうなものばかりです。今のところは
1.実際に授業してモデルを見せる
2.ワークショップの開催
3.各先生の授業を参観しフィードバック
この辺りの活動をして行こうかなと思っています。先生たちの考えやプライドを尊重しつつ、何かいい変化を起こすことができればという感じです。日本式が全て絶対的に良いとも思い込まないようにしながら、この学校でのベストな形を見つけていくことができればと思います。軌道に乗ってきたら来年あたりからは他校や他地域にも何か広げる活動ができたらななんてこともぼんやりと。
こちらにきて2ヶ月ちょっと、10分の1が終わりました。これは思っていたよりも2年あっという間かもしれない。
写真は先日近所で発見した牛の頭の骨です。ツノが立派。